「パッシブデザイン」という設計手法があります。

自然の恵みを最大限に受ける、省エネで素晴らしい設計手法です。

パッシブデザインで日本で一番有名な方といえば松尾和也さんではないでしょうか。

温熱環境を勉強している設計者であれば必ず知っていますし、最近では一般の方でも知っている方が増えています。

私は4~5年前に松尾さんの勉強会に参加しています。

パッシブデザインと床下エアコンを学んできました。

しかし、両方とも採用していません。

福井にはパッシブデザインを売りにしている設計事務所はたくさんあります。

なぜ当社で採用していないか?

シンプルに福井に向いていないからです。

松尾さんは講義の中で

「パッシブデザインの冬の日射取得側(外から取り入れる熱エネルギー)と断熱側(室内の熱を逃がさない)では、計算すると若干日射取得側が有利に働きます。ただし北陸など日照時間の短い地域はこの限りではないので気を付けてください」と公言しています。

しかも何度も言っていました。

私の記憶では、その講義中に3回は同じことを聞いたと思います。

松尾さんは影響力のある方なので地域性も考慮し細心の注意を払いながら講義してくれました。

12月、1月、2月の90日間での日照時間です。

東京=608時間

福井の平均=222時間・・・。

ちなみにこの90日間での日中の時間は720時間です。

関東では日照時間が600時間以上ある地域はたくさんあります。

関東では冬の日中、約85%が晴れているのに対し福井の冬は約30%。

計算上600時間で若干有利に働くのであれば222時間では不利に働くのは計算しなくてもわかります。

福井でパッシブデザインを売りにしている設計事務所などは一般の方にこの事実を隠し、データ収集の良いとこだけ発信し「晴れれば冬でも無暖房」と謳い洗脳しています。

ここからは日射取得と断熱の話で、2017年に私が書いた記事を抜粋しています。

パッシブデザインでは南側の窓を出来るだけ大きく・たくさん配置します。

夏の太陽高度が高い時は日射を遮り、冬の太陽高度の低い時は日射を取り入れるように軒の出や庇を付けます。

一般的な掃出し窓(2M×1.7M)程度の大きさだと、晴れの日には600W程度の熱エネルギーが取得できるので壁一面だとかなりのものです。

南面に掃出し窓が4~5枚分くらいの窓ばかりの家も、まれに見かけます。

600W×5か所=3000W分の熱量だとエアコン3台分くらいでしょうか。

冬でも晴れの日は無暖房で暖かいと思います。

ただし晴れの日は・・・、です。

晴れ以外の日は、窓は寒いのです・・・。

アルミ樹脂複合ペアガラスの断熱性は5ミリのグラスウール(断熱材)と同等です。

近年、サッシの断熱性能も向上しています。

樹脂サッシのトリプルガラスでも20~30ミリの断熱材程度です。

通常の壁の断熱材は100ミリですから、晴れ以外の時はサッシ=断熱性の低い薄壁になります。

晴れ以外の時=夜・雪・雨・曇り、そして共働き率日本一の福井県。

福井の実生活の中で、冬の晴れた日に「無暖房でも暖かくて気持ちいいな」と思える日は、どれだけあるのでしょうか?

これがリアルな話です。

もちろん窓は断熱性だけでなく、採光や景観・解放感など恩恵を受ける部分もたくさんあると思います。

他にも「環境に配慮した家を建てたい!」など。

そういった理由で窓を大きくする分には良いと思うのですが、ランニングコストなどコスパ重視でパッシブデザインを採用するのは不利に働きます。

時代と共に移り変わっていくものがありますが、流行やあこがれに流されず真実を追求し快適な家づくりをしていきたいですね。

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